損保数理 序章 出題分析と合格戦略

損保数理の本試験の形式・配点・出題の傾向と、学習の進め方です(無料公開)。

この章の節

この序章では、2006〜2025年度の過去問の全設問(20年度分、313件。小問の中の(ア)(イ)などで論点が分かれるものは別に数えた件数)について、配点・論点の分類・難易度を記録したデータを集計し、どの分野にどれだけの点が配られているかを示します。そのうえで、180分の試験時間の中で70点を取るための解き方の方針をまとめます。集計の中心は、現在の出題形式に近い直近10年(2016〜2025年度、168件)です。

試験の形式

2026年度試験の形式は表序-1のとおりです。

表 序-1 2026年度「損保数理」の試験の形式

試験日時 2026年12月7日(月)14時30分開始。試験時間は180分
方式 CBT(会場のパソコンで解答する方式)。画面には簡易的な電卓機能もある
出題形式 すべて多肢選択式。数値は(A)〜(J)の10個の選択肢から「最も近いもの」を選ぶ形が中心。ほかに式の選択、記述から「正しいものをすべて」選ぶ正誤、答えの数字を1桁ずつ選ぶ形式がある
問題文の約束 冒頭に「特に断りがないかぎり、消費税については考慮しない。免責金額および支払限度額は1事故あたりのものであり、各クレームは独立である」とある
出題範囲 教科書『損保数理』(日本アクチュアリー会、平成23年2月改訂版)、『モデリング』(日本アクチュアリー会)第1章。細目は、料率算定の基礎(回帰分析などを含む)、リスクモデル、純保険料と営業保険料の算定方法、信頼性理論、経験料率・クラス料率、支払備金の数理、積立保険の数理、保険料算出原理、危険理論の基礎、再保険の数理、リスク評価の数理
合格基準 満点の60%を基準として試験委員会が相当と認めた得点(合格基準点)以上で合格
電卓 四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\) 演算・数値のメモリー機能のみの電卓を持ち込める(定数計算機能も可)。関数電卓は使えない。計算問題は √ 電卓の使用を前提に出題される
計算用紙 メモ用紙10枚(不足すれば申し出て追加。試験後に回収)
付表 なし。標準正規分布の上側 \(\varepsilon\) 点は問題ごとに必要な値だけが小さな表の形で、\(\log 2=0.693\)、\(\ee=2.718\) などの値は「必要であれば〜を用いること」として問題文で与えられる

出題形式の後半、問題文の約束、付表の行は2023〜2025年度の過去問による。それ以外は日本アクチュアリー会「2026年度 資格試験要領」と同別紙「受験時の留意事項」「出題範囲」による。

合格基準点は「60点ちょうど」と決まっているわけではなく、年度ごとに試験委員会が決めます。本書が70点を目標にするのはこのためです。

出題範囲は教科書の全体です。生保数理のように教科書の一部の章が範囲外になることはありません。『モデリング』は第1章(回帰分析)だけが範囲で、本書では第2章で扱います。

分野別の配点シェア

図序-1は、直近10年の総配点1000点が本書のどの章に配られたかを、各設問の主な論点で分類して集計したものです。シェアの値は「毎年平均して何点出るか」と読めます。たとえば第12章「危険理論と破産確率」の 11.2% は、毎年平均およそ11.2点分が、破産確率・調整係数の問題に配られているということです。

図 序-1 直近10年(2016〜2025年度)の章別の配点シェア。各設問を主な論点の1章に割り当てて集計

損保数理の配点も、特定の章に集中してはいません。最も多い第12章でも 11.2% で、上位4章(第7・12・13・15章)を合わせて38.1%です。15章のうち7章(第7・8・9・10・11・12・15章)は10年間毎年、第1・3・13章も10年中9年出題されています。重要度 S の8章で配点の68.5%を占めるので、S の章を確実に取れば合格点の大半がそろうという構造です。分野のまとまりで見ると、料率の基礎とクレームのモデル(第1〜5章)が25.4%、経験・クラス料率と支払備金・積立保険(第6〜10章)が30.0%、算出原理・危険理論・再保険(第11〜13章)が28.8%、リスク評価と従属性(第14・15章)が14.4%です。

各章は独立した話題に見えますが、計算の道具は共通です。信頼性理論のベイズ推定と Bühlmann モデルは件数の混合分布(第4章)の上に立ち、算出原理・破産確率・再保険は総額の分布と積率母関数(第5章)を使い、ストップロス再保険料や TVaR は免責の期待値 \(\E[\pos{X-d}]\)(第3章)と同じ積分です。第3〜5章を飛ばして後半だけを学ぶことはできません。

表序-2は、章ごとのシェアと出題された年数、件数、20年(2006〜2025年度)でみたシェア、重要度をまとめたものです。複数の章にまたがる記述の正誤問題(1.4%)は、章に割り当てずに最後の行に示しました。

表 序-2 本書の章と出題データ(シェアは配点の%)

直近10年(2016〜2025) 20年
lr)3-5lr)6-6 章 内容 シェア 出題年数 件数 シェア 重要度

時期による変化

表序-3は、2006〜2015年度の10年と、2016年度以降の5年ずつを比べたものです。

表 序-3 時期別の章別配点シェア(%)。増減は2006〜15年度から2021〜25年度への変化

2006〜15 2016〜20 2021〜25 増減

小問ごとの配点が印刷されていない設問(71件。うち直近10年は36件で、いずれも小問の中の(ア)(イ)など)は、大問・小問の配点を等分した近似値で集計した。2024年度問2(2)は冊子の配点(8点)による。

目立つ変化は次の3つです。

危険理論と破産確率(第12章)は、どの時期でも配点が最も多い章の1つです(12.3% → 8.6% → 13.8%)。信頼性理論(第7章)・支払備金(第9章)・保険料算出原理(第11章)も、時期によらず8%前後で安定しています。

大問構成と問題の型

図序-2は、大問ごとの配点です。2017〜2020年度は4大問でしたが、2021年度からは問題1(20〜22点)・問題2(29〜38点)・問題3(40〜51点)の3大問に戻りました。2023〜2025年度は、問題1が4〜5問、問題2が4〜5問、問題3が4〜5問の小問からなり、1問あたりの配点は問題1が4〜6点、問題2が7〜8点、問題3が9〜10点です。

図 序-2 大問ごとの配点(2016〜2025年度)

問題の型は次の4つです。

計算の途中の丸めも問題文で指定されます。支払備金の問題なら「保険金・支払備金は小数点以下第1位を四捨五入して整数、ロスディベロップメントファクターは小数点以下第4位を四捨五入して第3位まで」(2023年度問1(2))のように細かく決められ、指示どおりに丸めないと選択肢の値に合いません。

難易度の分布

本書の分析では、各設問の難易度を3段階で判定しています。A(定型)は公式を1回当てはめるだけの問題、B(標準)は2〜3段の計算や式の読み替えが要る問題、C(多段)は計算を何段も重ねる問題、式の導出、長い設定の読解が要る問題です。直近10年の件数は A が20件、B が85件、C が63件で、1年あたりの平均配点は A が6.6点、B が47.3点、C が46.0点です(図序-3)。

図 序-3 難易度別の配点(2016〜2025年度)

配点はほぼ B と C で半分ずつです。C の配点は年度による差が大きく(最も少ない2023年度で15点、最も多い2020年度で64点)、大問によっても違います。3大問になった2021〜2025年度では、C の割合は問題1が11%、問題2が41%、問題3が50%です。問題1は「型が決まった1手」の B が中心、問題2・3は B と C が半々という性格です。

目安として「A・B は9割、C は5割」を取ると、各年度の得点は64.4〜84.0点(平均71.6点)になります。70点に届かないのは C の多い年度(2016・2019・2020・2025年度)で、C を6割取れれば最も C の多い2020年度でも70.8点です。つまり、B を確実に取ったうえで、C の5〜6割を拾えるかが70点の分かれ目です。C の多くは危険理論・再保険・算出原理・従属性の問題3ですが、(ア)(イ)と1段ずつに分ければ、本書の各節の例題と同じ計算です。

頻出の出題パターン

表序-4は、直近10年に繰り返し出ている出題パターンと、本書で扱う節です。同じ型の問題が数値や契約条件を変えて出るので、各節の例題と問題集の S の問題で型を身につけておくことが、そのまま得点になります。

表 序-4 頻出の出題パターンと本書の節

出題パターン 主な出題 本書の節

合格戦略

目標点の内訳

70点の内訳は、問題1で18点(22点中)、問題2で21点(30点中)、問題3で31点(48点中)が目安です。問題1は第1・8・10章などの型が決まった小問が中心で、ここで取りこぼさないことが前提です。問題2は4〜5問のうち、S の節の型に当てはまる3問を確実に取ります。問題3は各問の前半の空欄を確実に埋め、後半は選択肢から選んだ値を使って拾える分を拾います。

解く順番と時間配分

満点100点に対して試験時間は180分なので、1点あたり約1.8分が基準です。解き始める前の2〜3分で問題3の5つの題材を確認し、そのうえで問題1から順に解きます。方針が立たない小問は印を付けて飛ばし、一通り解いて戻ります。2025年度の構成なら表序-5の配分が目安です。

表 序-5 180分の時間配分の目安(2025年度の構成)

段階 時間 すること
問題1(22点) 40分 1問8分。5分で方針が立たなければ飛ばす
問題2(30点) 55分 1問14分。方針が立つものから解き、残りに戻る
問題3(48点) 75分 1問15分。各小問の(ア)と、前の答えを使わずに解ける空欄を優先する
見直し・再挑戦 10分 飛ばした小問に戻る。全欄の記入を確かめる

未記入の欄は得点になりません。時間が残り少なくなったら、計算が終わっていない欄にも、選択肢の中から最も確からしい値を入れておきます。

電卓の使い方

使える電卓は四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\)・メモリーだけです。指数・対数の値と正規分布の上側 \(\varepsilon\) 点は、必要なものが問題文で与えられます。

正誤問題と誘導問題の解き方

アクチュアリー一次試験 合格ナビ
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