損保数理 本書の使い方
損保数理の参考書と問題集を、どの順に・どう使うかの説明です(無料公開)。
この章の節
本書は、アクチュアリー一次試験「損保数理」に最短で合格するための参考書です。出題範囲は教科書『損保数理』(日本アクチュアリー会、平成23年2月改訂版)の全体と『モデリング』(日本アクチュアリー会)の第1章(回帰分析)で、本書はこれを15章に分けています。〜2025年度の出題を分析し(序章)、毎年出る分野と、後の章の計算の土台になる分野を厚くしました。
3冊の役割と使い分け
本書は問題集・解答解説と組み合わせて使います。3冊の章立てと章番号は共通です。
| 中身 | 使い方 | |
|---|---|---|
| 参考書(本書) | 序章(出題分析と合格戦略)、15の章、付録A(公式集・確率分布の一覧)、付録B(直前に1周する要点まとめ) | 章ごとに読み、例題を自分で解く。試験の直前は要点と公式だけを読み直す |
| 問題集 | 章ごとに本番と同じ10択・正誤・誘導つきの形式の問題6〜8問(全問)。巻末に模擬試験1回分(2025年度と同じ3大問・180分) | 参考書の章を読んだら、同じ章の問題を目標時間内で解く |
| 解答解説 | 問題集の全問の正解、途中式を省かない解説、誤答の選択肢がどこから来るか | 解いた直後に答え合わせをし、間違えた理由を確認する |
問題集の各問題には、重要度・目標時間・類題の過去問(例「2025-問2(2)」「2019-問1Ⅰ」。2021年度までの小問はローマ数字で表します)が付いています。過去問を解くときにも、本書の章との対応を確かめる手がかりになります。
重要度タグ
章・節・問題には、次の3段階の重要度タグを付けています。章のタグは、序章で集計した直近10年(2016〜2025年度)の配点シェアと出題された年数にもとづきます。
| タグ | 意味 | 章の判定基準 |
|---|---|---|
| S 必修 | 落とせない | 配点シェアが約6.5%以上で、10年中9年以上出題される(第1・3・7・9・11・12・13・15章) |
| A 頻出 | よく出る | 毎年出るがシェアが約5%の章(第8・10章)、または出題が10年中4〜7年の章(第4・5・6・14章) |
| B 余力 | 余力があれば | シェアが2%未満で、数学の科目と重なる内容が中心(第2章) |
節と問題のタグも同じ考え方です。毎年のように出る内容と、他の節の前提になる内容が S です。章のタグが A や B でも、中心の節は S のことがあります(第4章の混合ポアソン分布、第2章の最尤推定量の漸近分布など)。
紙面の見方
本文の中の囲みは8種類です。左が見本、右が読み方です。
各章の最初には「出題データ」の囲みがあり、その章の直近10年の配点シェア、出題された年数、典型的な出題パターン、章の目標をまとめています。
「要点だけ1周」ルート
本文と例題を読まずに、次の3つだけを読む読み方です。
各節の冒頭の要点の箱(全章で個)
本文中の公式の箱(全章で個)
付録B「要点総まとめ(1周用)」と、その最後の直前チェックリスト
所要時間の目安は、1節あたり2〜3分、1章あたり15分前後で、15章を通して4時間前後です。付録Bだけなら約1時間で1周できます。このルートは、1周目を始める前に全体の見取り図をつかむとき、2周目の合間に忘れかけた章を確認するとき、そして試験の前日に使います。読んでいて式の意味が思い出せない箇所があれば、そこだけ本文に戻ります。付録A「公式集」は、末尾の「主要な確率分布」の表とあわせて、問題を解いていて式や分布の平均・分散を確かめたいときに引く表です。
最短合格の学習計画
合格基準点は、満点の60%を基準に試験委員会が決めます。本書では70点を目標にします。問題3の小問1つ(10点)と、ほかの小問をいくつか落としても、合格ラインを越える水準です。
損保数理の15章は、互いに独立した話題が並んでいるように見えますが、第3〜5章の「クレーム額・クレーム件数・クレーム総額」のモデルが後半のほぼすべての計算の部品です。信頼性理論(第7章)は件数の混合分布(第4章)を、算出原理・危険理論・再保険(第11〜13章)は総額の分布と積率母関数(第5章)を使います。このため、配点の大きい章から読むより、章の順に進み、各章で S と A を一度に固めるほうが結局は速く進みます。S の8章だけで、直近10年の配点の%を占めます。
章の順に1周する:各章で、本文(B の節は後回し)→問題集の S の問題→A の問題。
間違えた問題を解き直す:1周目に間違えた問題と目標時間を大きく超えた問題に印を付けておき、数日あけて解き直す。
模擬試験:180分を計り、本番と同じ順序と時間配分(序章)で解く。
弱点の復習:模擬試験で落とした分野の章を読み直し、その章の問題を解き直す。B の節と第2章は、ここまで終えて時間が残れば読む。
次の表は、週10時間前後を12週続ける場合の例です。
| 週 | 参考書 | 問題集・演習 |
|---|---|---|
| 1 | 第1章(料率の基礎と営業保険料)、第2章の S の節 | 同じ章の S・A の問題 |
| 2 | 第3章(クレーム額の分布と免責・支払限度) | 同じ章の S・A の問題 |
| 3 | 第4章(クレーム件数)、第5章(クレーム総額) | 同じ章の S・A の問題 |
| 4 | 第6章(等級制度)、第7章の前半(有限変動信頼性・ベイズ推定) | 同じ章の S・A の問題 |
| 5 | 第7章の後半(Bühlmann)、第8章(クラス料率・GLM) | 同じ章の S・A の問題 |
| 6 | 第9章(支払備金)、第10章(積立保険) | 同じ章の S・A の問題 |
| 7 | 第11章(保険料算出原理) | 同じ章の問題、第3〜5章の解き直し |
| 8 | 第12章(危険理論と破産確率) | 同じ章の S・A の問題 |
| 9 | 第13章(再保険) | 同じ章の S・A の問題 |
| 10 | 第14章(リスク尺度と極値理論)、第15章(従属性とコピュラ) | 同じ章の S・A の問題 |
| 11 | 付録A を通読 | 1周目に間違えた問題の解き直し |
| 12 | 付録B と直前チェックリスト | 模擬試験(180分)と答え合わせ、落とした分野の問題 |
時間が足りなければ、第2章と各章の B の節を省き、A の章(第4・5・6・14章)では S の節と S の問題を先に終えます。第3章と、第5章の複合分布のモーメント(5.2節)だけは、後の章の計算の部品なので省略しないでください。
記号と用語
記号は教科書に合わせ、期待値・分散・分布名・付表の記号は数学シリーズ(『数学 最短合格テキスト』)と共通にしています。次の表に主なものをまとめます。
| 記号 | 意味 | 章 |
|---|---|---|
| \(\E[X]\), \(\V[X]\), \(\Cov[X,Y]\), \(\P(A)\) | 期待値・分散・共分散・確率(変動係数は \(\CV\)) | 全章 |
| \(\uq{\varepsilon}\) | 標準正規分布の上側 \(\varepsilon\) 点 | 全章 |
| \(P\), \(\lambda\), \(\varepsilon\), \(\theta\), \(\delta\) | 営業保険料、損害率・社費率・手数料率・利潤率 | 1 |
| \(K\), \(U_t\), \(\adue_{\angl{n}}\) | 長期係数、未経過料率係数、期始払の確定年金現価率 | 1・10 |
| \(N\), \(X\), \(S=\sum_{i=1}^{N}X_i\), \(N(t)\) | クレーム件数・クレーム額・クレーム総額・件数過程 | 3〜5 |
| \(d\), \(u\), \(\pos{x}=\max(x,0)\) | 免責金額、支払限度額(支払額の上限) | 3 |
| \(\Po(\lambda)\), \(\Bin(n,p)\), \(\NB(k,p)\) | ポアソン・二項・負の二項分布 | 4 |
| \(\Ga(\alpha,\beta)\), \(\LN(\mu,\sigma^2)\), \(\Pa(\alpha,\beta)\) | ガンマ(平均 \(\alpha/\beta\))・対数正規・パレート分布 | 3 |
| \(Z\), \(n_F\), \(\mu\), \(v\), \(a\), \(K=v/a\) | 信頼度、全信頼の件数、Bühlmann の構造パラメータ | 7 |
| \(U(t)=u+ct-S(t)\), \(\theta\), \(R\), \(\psi(u)\) | サープラス、安全割増率、調整係数、破産確率 | 12・13 |
| \(\VaR_{\alpha}\), \(\TVaR_{\alpha}\), \(\CTE_{\alpha}\), \(\ES_{\alpha}\) | リスク尺度(\(\alpha\) は信頼水準) | 14 |
| \(\GPD(\xi,\beta)\), \(\GEV\) | 一般化パレート分布・一般化極値分布 | 14 |
| \(C(u,v)\), \(\tau\), \(\rho_S\), \(\lambda_U\), \(\lambda_L\) | コピュラ、順位相関 \(\tau\)・\(\rho_S\)、裾従属係数 | 15 |
教科書と違う記号は2つだけです。二項分布は教科書の \(B(n,p)\) を数学シリーズに合わせて \(\Bin(n,p)\) とし、支払限度額は教科書第1章の \(a\) ではなく第2章と同じ \(u\) で表します。同じ文字が章によって別の意味になるものもあります。\(\theta\) は第1章では代理店手数料率、第12・13章では安全割増率、\(K\) は第1章では長期係数、第7章では Bühlmann の \(v/a\)、\(u\) は第3章では支払限度額、第12章では初期サープラスです。同じ問題に両方が出るときは一方を言葉で書きます。
用語も教科書の語を使います。保険料と保険金の計上基準は「リトン」「アーンド」「ペイド」「インカード」で、本試験の問題文に出る同義語(計上保険料=リトン、既経過保険料=アーンド、既発生保険金=インカード、クレディビリティ係数=信頼度)との対応は第1章で示します。例題と問題集の問題文は、本試験の冒頭と同じく「消費税は考慮しない。免責金額・支払限度額は1事故あたり、各クレームは独立」を前提とし、免責はエクセス方式、年度は4月〜3月とします。
アクチュアリー一次試験 合格ナビ
アプリなら、空欄ごとに記号を選ぶ本番と同じ形式で問題を解いて自動採点し、間違えた問題を受験日に合わせて出し直します。電卓と、180分の模擬試験も使えます。