生保数理 序章 出題分析と合格戦略
生保数理の本試験の形式・配点・出題の傾向と、学習の進め方です(無料公開)。
この章の節
この序章では、2006〜2025年度の過去問の全小問(20年度分、313件)について、配点・論点の分類・難易度を記録したデータを集計し、どの分野にどれだけの点が配られているかを示します。そのうえで、180分の試験時間の中で70点を取るための解き方の方針をまとめます。集計の中心は、現在の出題形式に近い直近10年(2016〜2025年度、164件)です。
試験の形式
2026年度試験の形式は表序-1のとおりです。
表 序-1 2026年度「生保数理」の試験の形式
| 試験日時 | 2026年12月8日(火)14時30分開始。試験時間は180分 |
| 方式 | CBT(会場のパソコンで解答する方式)。画面には簡易的な電卓機能もある |
| 出題形式 | すべて多肢選択式。数値は(A)〜(J)の10個の選択肢から「最も近いもの」を選ぶ形が中心。ほかに式の選択、記述(A)〜(E)から「常に正しいものをすべて」選ぶ正誤(完答のみ得点)、誘導つきの空欄補充がある |
| 出題範囲 | 教科書『生命保険数学』(二見隆、日本アクチュアリー会)上巻第1〜6章、下巻第7〜9章・第12〜14章。細目は、利息の計算、生命表および生命関数、脱退残存表、純保険料、責任準備金(純保険料式)、計算基礎の変更、営業保険料、実務上の責任準備金、解約その他諸変更に伴う計算、連合生命に関する生命保険および年金、就業不能(または要介護)に関する諸給付、災害および疾病に関する保険 |
| 合格基準 | 満点(100点)の60%を基準として試験委員会が相当と認めた得点(合格基準点)以上で合格 |
| 電卓 | 四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\) 演算・数値のメモリー機能のみの電卓を持ち込める(定数計算機能などは可)。関数電卓は使えない。計算問題は √ 電卓の使用を前提に出題される |
| 計算用紙 | メモ用紙10枚(不足すれば申し出て追加。試験後に回収) |
| 付表 | なし。累乗・指数の値や計算基数は、問題文に「ただし、〜とする」「必要であれば〜を用いなさい」として、問題ごとに必要な分だけ与えられる |
出題形式の後半と付表の行は2022〜2025年度の過去問による。それ以外は日本アクチュアリー会「2026年度 資格試験要領」と同別紙「受験時の留意事項」「出題範囲」による。
合格基準点は「60点ちょうど」と決まっているわけではなく、年度ごとに試験委員会が決めます。本書が70点を目標にするのはこのためです。
教科書の下巻第10・11章(剰余の分析・剰余金の還元)、第15章(団体定期保険)、第16章(退職年金保険)は出題範囲に入りません。本書でも扱いません。
分野別の配点シェア
図序-1は、直近10年の総配点1000点が本書のどの章に配られたかを、各小問の主な論点で分類して集計したものです。シェアの値は「毎年平均して何点出るか」と読めます。たとえば第12章「連合生命」の 11.6% は、毎年およそ11.6点分が連生の問題だということです。
図 序-1 直近10年(2016〜2025年度)の章別の配点シェア。各小問を主な論点の1章に割り当てて集計
生保数理の配点は、特定の章に集中していません。最も多い第12章でも 11.6% で、14章のうち9章は10年間毎年出題されています。配点の山は下巻の第9章(営業保険料)・第12章(連合生命)・第13章(就業不能)・第14章(災害・疾病)で、この4章で38.7%を占めます。上巻の範囲(第1〜8章)は 47.9%、下巻の範囲(第9〜14章)は 52.1% とほぼ半々です。
ただし、下巻の各章は上巻の道具を使う応用です。営業保険料は年払純保険料(第5章)に予定事業費を加えたもの、連生・就業不能は生命確率(第2章)と多重脱退(第3章)を2人・2状態に広げたもの、入院給付は1年定期保険の考え方そのものです。上巻を飛ばして下巻だけを学ぶことはできません。
表序-2は、章ごとのシェアと出題された年数、小問数、20年(2006〜2025年度)でみたシェア、重要度をまとめたものです。各章の冒頭の「出題データ」の数値はこの表の値です。
表 序-2 本書の章と出題データ(シェアは配点の%)
| 直近10年(2016〜2025) | 20年 | |||||
| lr)3-5lr)6-6 章 | 内容 | シェア | 出題年数 | 小問数 | シェア | 重要度 |
時期による変化
表序-3は、2006〜2015年度の10年と、2016年度以降の5年ずつを比べたものです。分野のまとまりで見ると大きな偏りはありませんが、章ごとには増減があります。
表 序-3 時期別の章別配点シェア(%)。増減は2006〜15年度から2021〜25年度への変化
| 2006〜15 | 2016〜20 | 2021〜25 | 増減 | ||
|---|---|---|---|---|---|
2006〜2013年度は大問の構成が現在と異なる(小問が10〜15問の年度がある)。配点表に小問別の記載がない小問(2009・2010年度の6件)は、大問の配点を按分した近似値で集計した。
目立つ変化は次の3つです。
災害・疾病が増えた:第14章は 3.4% → 6.0% → 10.4%。直近10年は毎年問題2の1問(7点)として出て、2023年度は問題4(10点)も医療保険でした。
営業保険料が増えた:第9章は 7.5% → 8.8% → 11.8%。問題3・4の誘導(2022年度問3、2025年度問4)にも使われます。
純保険料式の責任準備金の基本計算が減った:第6章は 7.1% → 3.8% → 4.0%。ただし準備金の考え方は、チルメル式(第10章)・延長保険(第11章)・計算基礎の変更(第8章)の問題の中で毎年使われています。
連合生命(第12章)と就業不能(第13章)は、20年でみると全章で1位・2位(13.6%、10.8%)です。直近10年はやや下がりましたが、どちらも毎年出題されており、最重要の分野であることに変わりはありません。
大問構成と問題の型
図序-2は、大問ごとの配点です。2018年度以降は問題1(4点×6問=24点)と問題2(7点×8問=56点)の独立した小問が80点を占め、残りの20点が誘導つきの大問です。2022年度からは、その20点が問題3・問題4の10点ずつに分かれました。
図 序-2 大問ごとの配点(2016〜2025年度)。同じ構成の年度はまとめて示す
問題の型は次の4つです。
数値の10択:(A)〜(J)の等間隔の10個から「最も近いもの」を選ぶ。問題1・2の大半がこの型です。2つの値①②を答える問題は完答のみ得点です。
式の選択:記号で表した式の10個の候補から、正しいものを1つ選ぶ(2025年度問2(4)の \(\frac{\dd}{\dd i}A_x\) の表示など)。
すべて選ぶ正誤:記述(A)〜(E)から「常に正しいものをすべて」選び、1つもなければ(F)を選ぶ。完答のみ得点で、1つの見落としが0点になります(2025年度問2(3)、2024年度問2(3)など)。
誘導つきの空欄補充:問題3・4。空欄①〜⑩に、(A)〜(R)程度の式の一覧から当てはまるものを選び、最後に数値を求める空欄が付くことが多い。「同じ選択肢を複数回用いてもよい」とされ、配点はいくつかの空欄のまとまりごと(完答)に付きます。
難易度の分布
本書の分析では、各小問の難易度を3段階で判定しています。A(定型)は公式を1回当てはめるだけの問題、B(標準)は2〜3段の計算や式の読み替えが要る問題、C(多段)は計算を何段も重ねる問題、未知数が式の両辺に現れる問題、文字式の導出、長い設定の読解が要る問題です。直近10年の小問数は A が2問、B が99問、C が63問で、1年あたりの平均配点は A が0.8点、B が54.0点、C が45.2点です(図序-3)。
図 序-3 難易度別の配点(2016〜2025年度)。C は最も少ない年でも25点
生保数理には、公式を当てはめるだけで解ける問題はほとんどありません。配点の半分強が B、半分弱が C です(C が最も多いのは2016・2021年度の53点)。C の割合は大問によって大きく違い、2018〜2025年度では問題1が15%、問題2が44%、問題3・4が78%です。問題1は「1手で解ける」B が中心、問題2は「2〜3手」で C が半分近く、問題3・4はほとんどが C という性格です。
目安として「A・B は9割、C は5割」を取ると、各年度の得点は68.8〜80.0点(平均71.9点)になります。C が最も多い2016・2021年度でも68.8点で、70点に近い水準です。つまり、B を確実に取ったうえで、C の半分を拾えるかが70点の分かれ目です。C の多くは連生・脱退残存表・自己参照型の営業保険料・誘導の大問ですが、1段ずつに分ければ本書の各節の例題と同じ計算です。
取るべき問題:問題1の6問と、問題2のうち利息・生命表・脱退残存表・チルメル式・延長保険・入院給付の小問。いずれも S の節の手順をそのまま使って解けます。
後回しにする問題:5分考えて方針が立たない小問。たとえば、選択期間の異なる2人の生存確率(2016年度問1(2))、営業保険料を死亡給付とする2つの保険の比較(2025年度問2(5))のように、設定の読み取りに時間がかかる問題です。
部分点を拾う問題:問題3・4。前半の空欄は定義や1年分の再帰式で埋まることが多く、最後の数値の空欄は前半を飛ばしても基数表から計算できることがあります。
頻出の出題パターン
表序-4は、直近10年に繰り返し出ている出題パターンと、本書で扱う節です。同じ型の問題が数値や給付の設定を変えて出るので、各節の例題と問題集の S の問題で型を身につけておくことが、そのまま得点になります。
表 序-4 頻出の出題パターンと本書の節
| 出題パターン | 主な出題 | 本書の節 |
|---|---|---|
合格戦略
目標点の内訳
70点の内訳は、問題1で20点(6問中5問)、問題2で38点(8問中5〜6問)、問題3・4で12点が目安です。問題1は第1〜6章と第10・11章の基本が中心で、ここで取りこぼさないことが前提になります。問題2は8問のうち、得意な分野と S の節の型に当てはまる問題を確実に取ります。問題3・4は、それぞれ前半の空欄と最後の数値で半分強を拾います。
解く順番と時間配分
満点100点に対して試験時間は180分なので、1点あたり約1.8分が基準です。解き始める前の2〜3分で問題3・4の題材を確認し、そのうえで問題1から順に解きます。方針が立たない小問は印を付けて飛ばし、一通り解いて戻ります。2025年度の構成なら表序-5の配分が目安です。
表 序-5 180分の時間配分の目安(2022年度以降の構成)
| 段階 | 時間 | すること |
|---|---|---|
| 問題1(24点) | 35分 | 1問6分。4分で方針が立たなければ飛ばす |
| 問題2(56点) | 85分 | 1問10分。8問のうち方針が立つものから解き、残りに戻る |
| 問題3・4(20点) | 50分 | 1題25分。前半の空欄と最後の数値の空欄を優先する |
| 見直し・再挑戦 | 10分 | 飛ばした小問に戻る。全欄の記入を確かめる |
未記入の欄は得点になりません。時間が残り少なくなったら、計算が終わっていない欄にも、選択肢の中から最も確からしい値を入れておきます。
電卓の使い方
使える電卓は四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\)・メモリーだけです。累乗・指数・対数の値は、必要なものが問題文に「ただし、〜とする」の形で与えられます。
未知数を1つの文字でおく:利率を求める問題は \(x=(1+i)^n\) とおいて \(x\) の2次方程式にし、最後に \(\sqrt{\phantom{x}}\) を重ねて \(i\) を出します。2乗根は1回、4乗根は2回、32乗根は5回押します。問題の期間は、この操作で答えが出るように作られています。
比にまとめてから計算する:年金現価や保険料は計算基数の比 \((N_x-N_{x+n})/D_x\) の形にし、差を先に求めてから割ります。2つの保険料の差を問う問題では、\(P_B-P_A=d_A-d_B\) のように差の式まで変形してから数値を入れると、桁落ちで選択肢の刻みを超えるのを防げます。
与えられた近似値をそのまま使う:\(\ee^{0.01}=1.01\)、\(v^{10}\)、\({}_np_x\) などが与えられたら、自分で計算し直さずにその値を使います。選択肢はその値で計算した結果に合わせてあります。
「最も近いもの」の刻みを先に見る:刻みが0.0001なら途中の値は6桁、1%なら3桁で足ります。答えが2つの選択肢のほぼ中央に来たときだけ、丸めずに計算し直します。問題文に丸め方の指示があれば、指示された箇所で必ず丸めます。
正誤問題と誘導問題の解き方
正誤は反例を1つ作る:「常に正しい」かどうかは、\(n=1\) や \(n=2\) を代入する、\(i\to0\)(\(v=1\))にする、死亡率を0にする、などで確かめます。1つでも成り立たない例があれば誤りです。正しそうな記述は、基数で組み直すか \(A=1-d\,\adue\) などの基本関係から導いて確定させます。完答なので、最後に(F)の可能性も確かめます。
誘導の空欄は最後の数値から逆に見る:最後の数値計算で使う基数を先に確認しておくと、途中の空欄に入る式の形(どの基数の比になるか)が絞れます。
式を選ぶ空欄は特別な場合で確かめる:\(n=1\)、\(i=0\)、死亡率0などを代入すると、多くの候補は明らかに誤りになります。符号違い・係数違いの候補が並ぶ Thiele の式などは、先に自分で1年分(微小時間分)の収支を書いてから選びます。
前の空欄が解けなくても先へ進む:誘導は「次の空欄を前の結果で書き換える」形が多く、後の空欄だけを独立に埋められることがあります。
アクチュアリー一次試験 合格ナビ
アプリなら、空欄ごとに記号を選ぶ本番と同じ形式で問題を解いて自動採点し、間違えた問題を受験日に合わせて出し直します。電卓と、180分の模擬試験も使えます。