数学 第1章 確率の基礎
数学の参考書の第1章です(無料公開)。この章の問題は第1章の問題にあります。
この章の節
数学の得点の土台になる章です。条件付き確率とベイズの定理は単独の小問として毎年のように出題され、後半の長い誘導問題でも「最初の1回で場合分け」する考え方が繰り返し使われます。
- 出題データ
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直近10年の配点シェア 約8% 出題された年 10年中10年
- 重要度
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S 必修全節が後の章の前提になります
- 典型パターン
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玉・カード・検査の2段階試行とベイズの逆算、数え上げ(組合せ・連)、交互に試行する勝負の勝率
- この章の目標
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樹形図か分割を描いて、条件付き確率を5分以内に立式できること
確率の公理と数え上げ A 頻出
同様に確からしい試行では、確率は「数え上げ」に帰着する。数えるときは、玉や人を区別して数えるのが安全。
和事象は包除原理で求める。「少なくとも1つ」は余事象から計算する。
「区別のない \(n\) 個を \(k\) 組に分ける」数え上げには重複組合せ \(\binom{n+k-1}{k-1}\) を使う。
確率の公理
標本空間 \(\Omega\) の部分集合(事象)\(A\) に対し、確率 \(\P(A)\) は次の3つを満たす関数として定義されます。 \[\P(A)\ge 0,\qquad \P(\Omega)=1,\qquad \P\Bigl(\,\bigcup_{i=1}^{\infty}A_i\Bigr)=\sum_{i=1}^{\infty}\P(A_i)\quad(A_i\ \text{は互いに排反}).\] ここから \(\P(A^c)=1-\P(A)\)、\(A\subset B \Rightarrow \P(A)\le\P(B)\)、\(\P(A\cup B)=\P(A)+\P(B)-\P(A\cap B)\) がすぐに導けます。試験では公理そのものより、これらの帰結を使いこなせるかが問われます。
包除原理
3つの事象の和事象は、重なりを足しすぎた分を引き、引きすぎた分を戻して求めます(図1.1)。
\[\begin{aligned} \P(A\cup B\cup C)&=\P(A)+\P(B)+\P(C)\\ &\quad-\P(A\cap B)-\P(B\cap C)-\P(C\cap A)+\P(A\cap B\cap C). \end{aligned}\] 一般に \(n\) 個の事象では、\(k\) 個の積事象の確率の和に \((-1)^{k-1}\) を掛けて、\(k=1,\dots,n\) で足します。
図 1.1 包除原理。単純に足すと重なりが複数回数えられる
代表例が完全順列(モンモールの問題)です。\(n\) 人が帽子を預け、帽子がでたらめに返されるとき、自分の帽子を受け取る人が少なくとも1人いる事象を考えます。\(A_i\) を「\(i\) 番目の人が自分の帽子を受け取る」とすると、\(k\) 人を指定したとき全員が自分の帽子を受け取る確率は \((n-k)!/n!\) です。指定の仕方は \(\binom{n}{k}\) 通りなので、 \[\P\Bigl(\,\bigcup_{i=1}^{n} A_i\Bigr)=\sum_{k=1}^{n}(-1)^{k-1}\binom{n}{k}\frac{(n-k)!}{n!} =\sum_{k=1}^{n}\frac{(-1)^{k-1}}{k!}\ \xrightarrow{\ n\to\infty\ }\ 1-\ee^{-1}.\] 誰も自分の帽子を受け取らない並べ方の数(攪乱順列の数)\(D_n\) は、\(n=1,2,3,4,5\) に対して \(0,1,2,9,44\) です。小さい \(n\) の値は覚えておくと検算に使えます。
数え上げの道具
| 状況 | 数え方 | 例 |
|---|---|---|
| 区別できる \(n\) 個から \(k\) 個を並べる | \(n!/(n-k)!\) | 席順、順位 |
| 区別できる \(n\) 個から \(k\) 個を選ぶ | \(\binom{n}{k}\) | 非復元抽出、トランプの手札 |
| 区別できない \(n\) 個を \(k\) 個の箱に分ける | \(\binom{n+k-1}{k-1}\) | 重複組合せ、連の配分 |
| 同上で、空の箱を作らない | \(\binom{n-1}{k-1}\) | 仕切りを \(n-1\) か所の隙間に入れる |
最後の2行は「玉と仕切り」の考え方で理解しておきます。\(n\) 個の玉の間の \(n-1\) か所の隙間から \(k-1\) か所を選んで仕切りを入れれば、空の箱のない分け方が1つ決まります。
赤玉4個と白玉3個を無作為に1列に並べる。赤玉が連続している部分(連)がちょうど2つになる確率を求めよ。
解 並べ方は赤玉の位置の選び方で \(\binom{7}{4}=35\) 通りあり、すべて同様に確からしい。赤の連が2つのとき、赤玉4個を空でない2つの塊に分ける方法は、玉の間の3か所から仕切りを1か所選ぶ \(\binom{3}{1}=3\) 通りです。白玉3個が作る4か所の隙間(両端を含む)のうち2か所に赤の塊を置く方法は \(\binom{4}{2}=6\) 通りです。よって求める確率は \[\frac{3\times 6}{35}=\frac{18}{35}.\]
2023年度問4(3)では、カードの「役」が続く回数(連の数)の確率を区別のない玉の配分(重複組合せ)として数える誘導問題が出ました。数え方を組み立てる力が問われます。
条件付き確率と独立性 S 必修
\(\P(B\cond A)=\P(A\cap B)/\P(A)\):\(A\) が起きた世界に標本空間を縮めて考える。
乗法定理 \(\P(A\cap B)=\P(A)\,\P(B\cond A)\) を、試行の順番どおりに掛けていく。
独立 \(\Leftrightarrow\ \P(A\cap B)=\P(A)\P(B)\)。「排反」と「独立」はまったく別の概念。
\(\P(A)>0\) のとき、\(A\) が起きたという条件のもとでの \(B\) の条件付き確率を \[\P(B\cond A)=\frac{\P(A\cap B)}{\P(A)}\] と定める。
定義の分母は「条件の事象 \(A\) の確率」です。条件付き確率は、\(A\) の外側を捨てて、\(A\) の中での \(B\) の割合を測る操作だと考えると、分母を取り違えません。
この定義を書き換えたものが乗法定理です。順に起こる試行では、各段階の条件付き確率を掛けていきます。 \[\P(A_1\cap A_2\cap\cdots\cap A_n)=\P(A_1)\,\P(A_2\cond A_1)\,\P(A_3\cond A_1\cap A_2)\cdots\P(A_n\cond A_1\cap\cdots\cap A_{n-1}).\]
\(\P(A\cap B)=\P(A)\P(B)\) のとき、\(A\) と \(B\) は独立であるという。3つ以上の事象 \(A_1,\dots,A_n\) が(相互に)独立であるとは、任意の部分集合 \(\{i_1,\dots,i_k\}\) について \(\P(A_{i_1}\cap\cdots\cap A_{i_k})=\P(A_{i_1})\cdots\P(A_{i_k})\) が成り立つことをいう。
\(\P(A)>0,\ \P(B)>0\) のとき、\(A,B\) が排反なら \(\P(A\cap B)=0\ne\P(A)\P(B)\) なので、排反な事象は独立ではありません。また、3つの事象が2つずつ独立でも、3つ同時に独立とは限りません。2018年度問1(1)では、独立・排反・条件付き確率に関する命題の真偽が問われました。
全確率の公式とベイズの定理 S 必修
原因 \(H_1,\dots,H_n\) で標本空間を分割し、各原因のもとでの確率を重み付き平均すると全体の確率になる(全確率の公式)。
ベイズの定理は「結果 \(A\) を見たあとで、原因 \(H_i\) の確率を更新する」式。分子は樹形図の1本の枝、分母は \(A\) に至る枝の合計。
\(H_1,\dots,H_n\) が互いに排反で \(\bigcup_i H_i=\Omega\)、\(\P(H_i)>0\) とする。このとき \[\begin{aligned} \P(A)&=\sum_{j=1}^{n}\P(H_j)\,\P(A\cond H_j),\\[2pt] \P(H_i\cond A)&=\frac{\P(H_i)\,\P(A\cond H_i)}{\displaystyle\sum_{j=1}^{n}\P(H_j)\,\P(A\cond H_j)}. \end{aligned}\] \(\P(H_i)\) を事前確率、\(\P(H_i\cond A)\) を事後確率という。
ベイズの定理は暗記するものではなく、樹形図を描けば自然に出てきます。図1.2の例で確認しましょう。
図 1.2 検査の樹形図。陽性に至る枝(赤字)の合計が分母になる
ある病気の有病率は \(0.5\%\) である。検査は、罹患者を \(98\%\) の確率で陽性と判定し、非罹患者を \(97\%\) の確率で陰性と判定する。陽性と判定された人が実際に罹患している確率を求めよ。
解 図1.2の陽性に至る2本の枝の確率は \(0.0049\) と \(0.02985\) です。ベイズの定理より \[\P(H_1\cond\text{陽性})=\frac{0.0049}{0.0049+0.02985}=\frac{0.0049}{0.03475}\approx 0.141.\] 検査の精度が高くても、もともとの有病率が低いと、陽性者の大半は非罹患者になります。直感と結果がずれやすいので、選択肢に \(0.98\) や \(0.97\) が並んでいても飛びつかないことが大切です。
同じ検査をもう一度独立に行って再び陽性だった場合は、1回目の事後確率 \(0.141\) を新たな事前確率として同じ計算を繰り返します。結果は約 \(0.843\) に上がります。ベイズの定理は「情報が増えるたびに確率を更新する」仕組みだと理解すると、統計の章のベイズ推定にもつながります。
2021年度問1(1)は「箱をランダムに選び、取り出した玉から箱を逆算する」問題、2023年度問1(1)は迷惑メールの判定でした。どちらも事前確率と条件付き確率が問題文に与えられ、樹形図を描けば数分で解けます。2025年度問1(1)では、玉に書かれた数字の回数だけコインを投げる2段階試行が出ています。
最初の1回で場合分けする S 必修
試行を繰り返す問題では、最初の1回の結果で場合分けし、残りが「同じ形の問題」に戻ることを使って方程式を立てる(first-step analysis)。
交互の勝負では、1巡で決着しない確率を \(r\) とし、勝率を等比級数 \(a/(1-r)\) で求める。
ギャンブラーの破産確率は2階の差分方程式の解として求まる。
交互に試行する勝負
A と B が交互にサイコロを投げ、先に6を出した方が勝つとします。A が先手です。1巡(A と B が1回ずつ投げる)で決着がつかない確率は \((5/6)^2=25/36\) で、決着しなければ状況は最初と同じに戻ります。A の勝率を \(a\) とし、最初の1巡で場合分けして \[a=\frac16+\frac{25}{36}\,a\qquad\Longrightarrow\qquad a=\frac{1/6}{1-25/36}=\frac{6}{11}.\] 「最初に戻る」ことを使えば、無限級数を書かずに1行で解けます。
ギャンブラーの破産問題 S 必修
所持金 \(i\) から始めて、毎回確率 \(p\) で1増え、\(q=1-p\) で1減るとします。所持金が \(0\) になるか \(N\) に達したら終わります。所持金 \(i\) から \(N\) に達する確率を \(P_i\) とし、最初の1回で場合分けして \[P_i=p\,P_{i+1}+q\,P_{i-1}\quad(1\le i\le N-1),\qquad P_0=0,\quad P_N=1.\] \(P_i=(p+q)P_i\) と書き直すと \(p(P_{i+1}-P_i)=q(P_i-P_{i-1})\) となり、差 \(d_i=P_i-P_{i-1}\) は公比 \(r=q/p\) の等比数列です。\(d_1=P_1\) とおいて足し合わせ、\(P_N=1\) から \(P_1\) を決めると、次の公式が得られます。
\(r=q/p\) とすると、所持金 \(i\) から \(N\) に達する確率は \[P_i=\begin{cases} \dfrac{1-r^{\,i}}{1-r^{N}} & (p\ne q),\\[10pt] \dfrac{i}{N} & (p=q=1/2). \end{cases}\]
図 1.3 ギャンブラーの破産問題の状態遷移(\(N=5\) の場合)
たとえば \(p=0.4,\ i=2,\ N=5\) なら \(r=1.5\) で、 \[P_2=\frac{1-1.5^2}{1-1.5^5}=\frac{-1.25}{-6.59375}\approx 0.190\] です。\(p<1/2\) だと、所持金の割合 \(i/N=0.4\) よりかなり小さくなります。
2023年度問4(4)で、この差分方程式を誘導に沿って解く問題が出ました。また、2018年度問2・2019年度問2・2020年度問2・2025年度問5のような「状態を定義して漸化式を立てる」長い問題は、この節の考え方を期待値に広げたものです(第3章で扱います)。
幾何確率 B 余力
連続的な一様分布に従う点の確率は「面積の比」で求める。
条件付きの幾何確率は、条件を満たす領域を新しい全体として面積比をとる。
2人が12時から13時の間に独立に一様に到着し、先に着いた方は15分だけ待つとします。到着時刻を時間単位で \(x,y\in[0,1]\) とすると、会える条件は \(|x-y|\le 1/4\) です。図1.4の帯の面積は、正方形から2つの直角三角形を除いて \[1-2\times\frac12\Bigl(\frac34\Bigr)^2=\frac{7}{16}.\]
図 1.4 待ち合わせ問題。確率は面積の比になる
「会えたという条件のもとで、2人とも前半30分に着いていた確率」は、帯を新しい全体と見て、帯と左下の正方形 \([0,1/2]^2\) が重なる部分の面積比をとります。重なりは \(1/4-1/16=3/16\) なので、答えは \((3/16)/(7/16)=3/7\) です。
2017年度問1(1)では、一様に分布する到着時刻と所要時間の組合せで「月末までに作業が終わらない確率」を幾何的に求めました。2025年度問1(2)の睡眠時間の問題(就寝・起床時刻が一様分布)は、同じ図を使って差の分布を求めるもので、第4章で扱います。
2段階の試行の樹形図を描き、ベイズの定理で事後確率を求められる S 必修
「最初の1回で場合分け」して、勝率や到達確率の方程式を立てられる S 必修
独立と排反の違いを、具体例で説明できる S 必修
包除原理で「少なくとも1つ」の確率を求められる(完全順列を含む) A 頻出
重複組合せ(玉と仕切り)で、連や配分の数を数えられる A 頻出
一様分布の点の確率を面積比で求められる B 余力
アクチュアリー一次試験 合格ナビ
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