数学 序章 出題分析と合格戦略
数学の本試験の形式・配点・出題の傾向と、学習の進め方です(無料公開)。
この章の節
この序章では、2001〜2025年度の過去問の全小問(456件)について、配点・論点の分類・難易度を記録したデータを集計し、どの分野にどれだけの点が配られているかを示します。そのうえで、180分の試験時間の中で70点を取るための解き方の方針をまとめます。集計の中心は、現在の出題傾向に近い直近10年(2016〜2025年度、190件)です。
試験の形式
2026年度試験の形式は表序-1のとおりです。
表 序-1 2026年度「数学」の試験の形式
| 試験日時 | 2026年12月9日(水)14時30分開始。試験時間は180分 |
| 方式 | CBT(会場のパソコンで解答する方式)。残り時間の表示と簡易電卓がある |
| 出題形式 | すべて多肢選択式(語群選択・数値記入を含む) |
| 出題範囲 | 指定された教科書の範囲に限る |
| 合格基準 | 満点の60%を基準として試験委員会が相当と認めた得点(合格基準点)以上で合格 |
| 電卓 | 四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\) 演算・メモリー機能のみの電卓を持ち込める。関数電卓は使えない。計算問題は \(\sqrt{\phantom{x}}\) 演算機能のある電卓を使う前提で出題される |
| 計算用紙 | メモ用紙10枚(不足すれば申し出て追加。試験後に回収) |
| 付表 | 過去問では、標準正規分布表、\(\chi^2\) 分布表、\(t\) 分布表、\(F\) 分布表、自然対数表、指数関数表が付いている |
付表以外は、日本アクチュアリー会「2026年度 資格試験要領」と同別紙「受験時の留意事項」による。
合格基準点は「60%ちょうど」と決まっているわけではなく、年度ごとに試験委員会が決めます。本書が70点を目標にするのはこのためです。
分野別の配点シェア
図序-1は、直近10年の総配点1000点が本書のどの章に配られたかを、各小問の主な論点で分類して集計したものです。シェアの値は「毎年平均して何点出るか」と読めます。たとえば第10章「仮説検定」の 13.5% は、毎年およそ13.5点分が検定の問題だということです。
図 序-1 直近10年(2016〜2025年度)の章別の配点シェア。各小問を主な論点の1章に割り当てて集計
上位6章(第10・4・1・8・2・14章)だけで配点の 55.1% を占め、いずれも重要度 S です。仮説検定と多次元分布(変数変換・順序統計量)の2章で、毎年およそ4分の1の点が出ます。一方、第11章「標本調査」と第7章「データのまとめ方と標本分布」は、主な論点として出る点は少なめです。ただし第7章の \(\chi^2\)・\(t\)・\(F\) 分布は、推定・検定の問題の途中で毎年のように使われます。
表序-2は、章ごとのシェアと出題された年数、重要度をまとめたものです。「主な論点」の列はその章の内容が小問の中心になった年数、「関連を含む」の列は、他の分野の小問の途中でその章の内容が使われた年も数えた年数で、各章の冒頭の「出題データ」はこちらの年数です。
表 序-2 本書の章と直近10年の出題データ
| 出題された年数(10年中) | |||||
| lr)4-5 章 | 内容 | シェア(%) | 主な論点 | 関連を含む | 重要度 |
時期による変化
表序-3は、2011年度以降を5年ずつに区切って、章別のシェアを比べたものです。確率・統計・モデリングの3分野の比率は、おおむね4:3:2〜3で安定しています。
表 序-3 時期別の章別配点シェア(%)。増減は2011〜15年度から2021〜25年度への変化
| 2011〜15 | 2016〜20 | 2021〜25 | 増減 | ||
|---|---|---|---|---|---|
2015年度以前の大問の一部(全期間で62件、2001〜2015年度)は、配点が空欄の数から按分した近似値です。直近10年の値はすべて解答例の配点表による正確な値です。
目立つ変化は次の3つです。
仮説検定が増えた:10.0% → 12.2% → 14.8%。主な論点として小問で毎年1〜3問出るほか、ネイマン・ピアソンの補題や精密法の導出が長い問題の題材になります。
区間推定の大問が減った:2011〜15年度は大問として区間推定の導出が繰り返し出たため 17.2% でしたが、直近5年は 4.0% です。ただし、出題は小問の形でほぼ毎年続いています。
シミュレーションが増えた:4.0% → 5.0% → 7.0%。2022年度のボックス・マーラーの変換式、2025年度のモンテカルロ法と負の相関法のように、大問としても出るようになりました。
第3章「期待値・分散」の値は時期によって大きく上下します(7.4% → 10.0% → 4.4%)。これは、期待値を求める大問(2016年度問2のゲーム料金、2025年度問5のくじ引きの期待回数など)が出たかどうかで大きく変わるためです。
大問構成の変化
図序-2は、大問ごとの配点です。2016〜2020年度は、12問の小問集(60点)と20点の大問2つという同じ構成でした。2021年度から大問が増え、2024年度からは6大問になっています。
図 序-2 大問ごとの配点(2016〜2025年度)。2016〜2020年度は5年とも同じ構成
2024・2025年度は、前半の問1〜3が1問5点の小問集(55点・50点)、後半の問4〜6が12〜18点の誘導つきの長い問題です。長い問題は「定理や公式の導出を空欄で追う → 具体的な数値に当てはめる」という流れが多く、同じ設定の上で小問が積み重なります。前半の小問集は全分野を一巡するので、S と A の分野を一通り押さえておくことが、そのまま前半の得点になります。
難易度の分布と、取る問題・捨てる問題
本書の分析では、各小問の難易度を3段階で判定しています。A(定型)は公式をそのまま当てはめれば解ける問題、B(標準)は2〜3段の計算や判断が要る問題、C(難)は発想や長い導出が要る問題です。直近10年の小問数は A が40問、B が122問、C が28問で、1年あたりの平均配点は A が18.7点、B が63.9点、C が17.4点です(図序-3)。
図 序-3 難易度別の配点(2016〜2025年度)。A と B の合計は最も少ない年でも72点
A と B を合わせた点は、最も少ない2021年度でも72点あります。C の問題は1年に最大28点で、C を丸ごと落としても、A と B を確実に取れば70点に届く計算です。現実には A・B でも取りこぼしが出るので、「A は全問、B は8割、C は2割」を目安にします。この目安で各年度の得点を計算すると、65.4〜84.2点(平均73.3点)になります。
取るべき問題:小問集の A・B。検定・区間推定の定型問題、最尤推定値、正規近似、単回帰、AR・MA の自己相関、推移確率行列、乱数の生成は、S の節の手順どおりに解けます。
後回しにする問題:5分考えて方針が立たない小問。直近10年の C の小問では、状態の多い漸化式で確率を求める問題(2022年度問1(1))、条件の込み入った最尤推定(2021年度問1(6))、検出力から標本の大きさを決める問題(2023年度問2(3))がこれに当たります。
捨ててよい空欄:長い問題の後半にある、証明や長い導出の途中の空欄(2021年度問3(2)の特性関数の展開の証明、2024年度問6(3)の \(t\) 分布の導出など)。ただし、その先にある数値の空欄は、導出を飛ばしても答えられることが多いので捨てません(後述)。
合格戦略
解く順番
解き始める前の2〜3分で全大問のテーマを確認し、後半の長い問題のうち、どれが自分の得意分野かを見ておきます。そのうえで前半の小問集から順に解きます。小問集は1問5点で、B 以下の問題が大半を占めるため、時間あたりの得点が最も高い部分です。小問集では方針が立たない問題に印を付けて飛ばし、一通り解いて戻ります。後半の長い問題は得意分野から解きます。
時間配分
満点100点に対して試験時間は180分なので、1点あたり約1.8分が基準です。5点の小問なら約9分ですが、定型の問題を5〜6分で終えて、浮いた時間を後半に回します。2024・2025年度の構成なら、表序-4の配分が目安です。
表 序-4 180分の時間配分の目安(6大問の場合)
| 段階 | 時間 | すること |
|---|---|---|
| 全体の確認 | 5分 | 全大問のテーマを見て、後半の長い問題を解く順を決める |
| 小問集(問1〜3) | 85分 | 1問7〜8分。5分で方針が立たなければ飛ばす |
| 長い問題(問4〜6) | 75分 | 1題約25分。前の空欄から順に確実に取る |
| 見直し・再挑戦 | 15分 | 飛ばした小問に戻る。全欄の記入を確かめる |
未記入の欄は得点になりません。時間が残り少なくなったら、計算が終わっていない欄にも、選択肢の中から最も近い値を入れておきます。
電卓と付表の使い方
使える電卓は四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\)・メモリーだけなので、対数・指数は付表で読みます。付表にない値は積と商で作ります(たとえば \(\log0.7=\log1.4-\log2\))。\(\Gamma(1/2)=\sqrt\pi\) や \(\ee\approx2.718\) のように付表にない定数は、問題文に与えられていなければ自分で覚えておく必要があります。メモリー機能は、回帰分析の \(\sum x_i^2\)、\(\sum x_iy_i\) のような積和を足し込むときに使うと、書き写しの誤りが減ります。
付表を引くときは、上側確率の表であることを常に意識します。両側5%なら上側2.5%点、下側の点は上側 \(1-\varepsilon\) 点を使います。\(F\) 分布の下側の点は、自由度を入れ替えた上側の点の逆数 \(\Fq{m}{n}{1-\varepsilon}=1/\Fq{n}{m}{\varepsilon}\) です。年度によって付表の自由度の範囲や刻みが違うので、必要な値が付表にあるかどうかも、選択肢を絞る手がかりになります。
誘導問題での部分点の取り方
配点は空欄ごと、またはいくつかの空欄のまとまりごとに付いています。長い問題でも、すべての空欄が埋まらなければ0点ということはありません。
最初の空欄は易しい:設定の確認(密度の積分、平均・分散、尤度の式など)であることが多く、A〜B の難しさです。必ず取ります。
途中の空欄は前後の式から推測できる:導出の穴埋めでは、空欄の直後の式が答えを強く示していることがあります。次の行の式を逆算して、空欄に入る形を選びます。
最後の数値の空欄は独立に取れる:導出が追えなくても、結論の公式(例:ポアソン平均の精密法の下限 \(\lambda_L=\chiq{2k}{1-\varepsilon/2}/(2n)\))を知っていれば数値は計算できます。導出の途中で行き詰まったら、先に最後の数値の空欄を解きます。
同じ選択肢を何度も使えることがある:問題文の指示(「同じ選択肢を複数回選んでもよい」「順不同」など)を確認してから選びます。
アクチュアリー一次試験 合格ナビ
アプリなら、空欄ごとに記号を選ぶ本番と同じ形式で問題を解いて自動採点し、間違えた問題を受験日に合わせて出し直します。電卓と、180分の模擬試験も使えます。