会計・経済・投資理論 序章 出題分析と合格戦略

会計・経済・投資理論の本試験の形式・配点・出題の傾向と、学習の進め方です(無料公開)。

この章の節

この序章では、2006〜2025年度の過去問の全設問(20年度分、1601件。小問の中の(ア)(イ)などで論点が分かれるものは別に数えた件数)について、配点・論点の分類・難易度を記録したデータを集計し、どの分野・どの章にどれだけの点が配られているかを示します。そのうえで、会計・経済・投資理論の3分野それぞれの最低ラインを確実に越え、合計70点を取るための解き方の方針をまとめます。集計の中心は、現在の出題形式に近い直近10年(2016〜2025年度、769件)です。

試験の形式

2026年度試験の形式は表序-1のとおりです。

表 序-1 2026年度「会計・経済・投資理論」の試験の形式

試験日時 2026年12月10日(木)14時30分開始。試験時間は180分(集合は開始の30分前)
方式 CBT(会場のパソコンで解答する方式)。画面には簡易的な電卓機能もある
配点 会計25点(問1〜5)・経済25点(問6〜9)・投資理論50点(問10〜17)の計100点
出題形式 すべて多肢選択式。数値は、会計・経済では(A)〜(J)の10個、投資理論では(A)〜(H)の8個の選択肢から「最も近いもの」を選ぶ。ほかに語群から語句を選ぶ形と、記述(A)〜(D)から「誤っているものを1つ」または「正しいものをすべて」選ぶ正誤の形がある
出題範囲 会計『財務会計講義(第27版)』第1〜12章、経済『入門|経済学(第4版)』Part 1の§1〜4・§8、Part 2の§9〜12、投資理論『新・証券投資論I 理論篇』第1〜3・5・7章、『新・証券投資論II 実務篇』第1・2・4章
合格基準 合格基準点(満点の60%を基準として試験委員会が相当と認めた得点)以上で合格。ただし、会計・経済・投資理論の1分野でも最低ライン(分野ごとの満点の40%を基準として試験委員会が相当と認めた得点)に達しなければ不合格
不合格の通知 得点ランクⅠ(合格基準点\(-\)10点以上)・Ⅱ(合格基準点\(-\)10点未満)は各分野とも最低ラインを達成した場合。最低ライン未達はランクⅢ
電卓 四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\) 演算・数値のメモリー機能のみの電卓を持ち込める(%・定数計算なども可)。関数電卓は使えない。計算問題は √ 電卓の使用を前提に出題される
計算用紙 メモ用紙10枚(不足すれば申し出て追加。試験後に回収)
付表 なし。標準正規分布の上側 \(\varepsilon\) 点など必要な値は、その問題の中に表や数値で示される(2025年度問11(4)のVaRなど)

出題形式と付表の行は2022〜2025年度の過去問による。それ以外は日本アクチュアリー会「2026年度 資格試験要領」と同別紙「受験時の留意事項」「出題範囲」による。

合格基準点は「60点ちょうど」と決まっているわけではなく、最低ラインも「40%を基準として」年度ごとに決まります。本書が合計70点、各分野で最低ラインより5点以上多い点を目標にするのはこのためです。

分野別の配点と最低ライン

20年度すべてで、配点は会計25点・経済25点・投資理論50点です。最低ラインは会計10点・経済10点・投資理論20点で、この3つを1つでも割ると、合計点に関係なく不合格になります。たとえば投資理論45点・経済15点・会計8点なら合計68点でも不合格です。投資理論でいくら点を伸ばしても、会計・経済の不足は埋まりません。

図序-1は、各分野の1年あたりの配点を本書の章に分けて並べ、最低ラインと本書の目標点を重ねたものです。棒の中の数字は直近10年の1年あたりの平均点で、そのまま全体の配点シェア(%)とも読めます。

図 序-1 分野ごとの1年あたりの配点(直近10年の平均)と、最低ライン・本書の目標点

3分野とも、最低ラインを支える柱になる章があります。

章別の配点シェア

図序-2は、直近10年の総配点1000点が本書のどの章に配られたかを、各設問の主な論点で分類して集計したものです。シェアの値は「毎年平均して何点出るか」と読めます。たとえば第2章「投資家の選好とポートフォリオ理論」の 9.5% は、毎年平均およそ9.5点分が、期待効用・リスク許容度・最小分散ポートフォリオなどの問題に配られているということです。

図 序-2 直近10年(2016〜2025年度)の章別の配点シェア。各設問を主な論点の1章に割り当てて集計

16章すべてが10年間毎年出題されていて、どの章も飛ばせる章ではありません。そのうえで、配点の大きい章は投資理論の第1〜4章(各6.9〜9.5%)と、経済の第9章(7.4%)、会計の第13・14章(7.5%・7.7%)です。重要度 S の10章で配点の70.9%を占めます。

表序-2は、章ごとの全体のシェア、分野内のシェア、出題された年数、件数、20年(2006〜2025年度)でみたシェア、重要度をまとめたものです。分野内のシェアは、その分野の満点を100%としたときの割合で、各章の冒頭の「出題データ」と同じ値です。

表 序-2 本書の章と出題データ(シェアは配点の%)

直近10年(2016〜2025) 20年
lr)3-6lr)7-7 章 内容 全体 分野内 年数 件数 全体 重要度

年度ごとの安定度

表序-3は、直近10年の各年度に、各章へ何点が配られたかを示したものです。色が濃いほど点数が大きく、「-」はその年度に出題がなかったことを表します。

表 序-3 年度別・章別の出題点数(2016〜2025年度)

章 内容 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025

3分野で性格がはっきり違います。

時期による変化

表序-4は、2006〜2015年度の10年と、2016年度以降の5年ずつを比べたものです。

表 序-4 時期別の章別配点シェア(全体に対する%)。増減は2006〜15年度から2021〜25年度への変化

2006〜15 2016〜20 2021〜25 増減

2006・2009〜2011年度などの小問のうち配点が読み取れない201件は、大問の配点に合うよう推定した値で集計した。2016年度以降にはこの推定値はない。

目立つ変化は次の3つです。

投資理論の債券(第1章)・株式(第4章)・オプション(第6章)、経済の貨幣(第12章)、会計の負債と純資産(第15章)は、どの時期でもシェアがほとんど変わりません。

大問構成と問題の型

表序-5は、直近10年の大問の構成です。2022年度から経済が4問、投資理論が8問になり、大問1つあたりの配点が小さくなりました。同時に、正誤問題に1.5点の小問が加わっています。

表 序-5 大問構成の推移(2016〜2025年度)

年度 会計(25点) 経済(25点) 投資理論(50点) 設問数 主な配点

設問数は小問の中の(ア)(イ)などを別に数えた件数。主な配点は、その時期の設問の5%以上を占める配点。このほか2025年度には4点の小問が2つ(問7(4)、問8(2))あった。

表序-6は、現在の形式になった2022〜2025年度の大問ごとの題材と配点です。投資理論の8問は大問名が毎年同じで、本書の第1〜7章にそのまま対応します。会計・経済は、大問ごとに問題の型が決まっています。

表 序-6 2022〜2025年度の大問の定位置と配点

大問 題材・問題の型(投資理論は問題冊子の大問名) 2022 2023 2024 2025

問題の型は次の4つです。

難易度の分布

本書の分析では、各設問の難易度を3段階で判定しています。Aは用語・定義の知識や公式を1回当てはめるだけの問題、Bは標準的な計算や複数の知識の組合せが要る問題、Cは計算を何段も重ねる問題、連立・場合分け、細かい会計処理が要る問題です。直近10年の設問の件数でみると、A は会計で25%、経済で8%、投資理論で12%です。図序-3は配点の割合で示したものです。

図 序-3 分野別の難易度の構成(2016〜2025年度の配点の割合)

会計は A の割合が最も大きく、用語・基準名・数値ルールの暗記だけで毎年5〜6点が取れます。経済は A がほとんどなく、計算(B・C)が9割を占めるので、用語の暗記だけでは最低ラインに届きません。投資理論は B が6割強で、型の決まった計算を確実にこなすことが得点に直結します。

この構成に、A・B・C それぞれの正答率を当てはめて各年度の得点を試算すると、次のことが分かります。

投資理論で B を9割取ることは、本書の各章の S の節と問題集の S の問題で十分に届く水準です。会計・経済で C を3割取るには、C の問題を最初から捨てずに、前半の空欄や1段目の計算だけでも埋めることが大切です。

頻出の出題パターン

表序-7は、直近の年度に繰り返し出ている出題パターンと、本書で扱う節です。同じ型の問題が数値や設定を変えて出るので、各節の例題と問題集の S の問題で型を身につけておくことが、そのまま得点になります。

表 序-7 頻出の出題パターンと本書の節(「2025-問14(1)ア」は2025年度問14(1)アを表す)

出題パターン 主な出題 本書の節

合格戦略

分野ごとの目標点

表序-8は、分野ごとの最低ラインと本書の目標点、その取り方です。どの分野も、目標点は最低ラインより5点以上多く設定しています。1〜2問の計算ミスや、苦手な題材が大きく出た年度でも、最低ラインを割らないための余裕です。

表 序-8 分野ごとの目標点と取り方

分野 満点 最低ライン 目標 目標の取り方
投資理論 50 20 40 第1〜4章で毎年約33点分が出る。計算の型が決まっているので8割を狙い、第5〜7章(状態価格・2項モデル・先物)で上積みする
経済 25 10 15 用語だけでは稼げない。毎年出る貨幣・信用乗数、ゲーム理論、余剰・課税・貿易の3つ(第9・10・12章)を手順化して確実に取り、問6の正誤で2〜3問を拾う
会計 25 10 15 問1の語句と問2・問3の正誤(計14〜15点)で8〜9点。基準名・一般原則・数値ルールの暗記が中心。問4・問5の計算(社債・減価償却・収益認識・ストック・オプション・税効果)で残りを積む

解く順番と時間配分

満点100点に対して試験時間は180分なので、1点あたり約1.8分が基準です。解く順番は、会計(問1〜5)→経済(問6〜9)→投資理論(問10〜17)とします。得意な投資理論から解き始めると、計算に熱中して時間を使いすぎ、最後に会計・経済が時間切れになるのが最も危険な失敗です。最低ラインが心配な会計・経済を先に済ませ、残りの時間を投資理論に使います。目安は表序-9の配分です。

表 序-9 180分の時間配分の目安(2025年度の構成)

段階 時間 すること
会計(問1〜5、25点) 40分 問1〜3の語句・正誤を15分で済ませ、問4・5の計算に25分。1問の計算に5分以上かかるものは印を付けて飛ばす
経済(問6〜9、25点) 45分 問6の正誤を10分、問7〜9の計算を各10〜12分。グラフの面積と利得表は手で描いて確かめる
投資理論(問10〜17、50点) 85分 1問10分強。各大問の前半の空欄を優先し、前の答えを使う後半は選択肢から選んだ値で進める
見直し・再挑戦 10分 最低ラインに近そうな分野から見直す。全欄の記入を確かめる

途中で各分野の時間を大きく超えたら、その分野の残りは後回しにして次の分野に移ります。未記入の欄は得点になりません。時間が残り少なくなったら、計算が終わっていない欄にも、選択肢の中から最も確からしいものを入れておきます。

電卓の使い方

使える電卓は四則演算・\(\sqrt{\phantom{x}}\)・メモリーだけです。累乗・指数・対数のキーはありません。

正誤問題の解き方

会計の問2・問3と経済の問6は、計算がない代わりに、記述の一部を入れ替えた誤りを見抜く問題です。

古い過去問の使い方

過去問は、2016年度以降を中心に解きます。2006〜2015年度の問題も論点の把握には役立ちますが、2006・2009〜2011年度は小問ごとの配点が冊子から読み取れない部分があり、問題の形式も今と違います。

会計の古い問題には、その後の基準改正で扱いが変わったものが含まれます。表序-10の論点は、古い過去問の解答をそのまま覚えないでください。本書の会計の章は、2026年10月時点の基準で書いています。

表 序-10 古い過去問で扱いが変わった主な論点(2026年10月時点)

論点 現行の扱い 古い過去問との違い
収益認識 収益認識に関する会計基準(2021年4月1日以後開始する事業年度から原則適用)。5ステップ、履行義務、変動対価、契約負債 実現主義の販売基準・割賦基準・試用販売・委託販売の出題。割賦基準は認められない
時価 時価の算定に関する会計基準(2021年4月1日以後開始する事業年度から)。時価のレベル1〜3 2019年度は公開草案の段階での出題
リース 新リース会計基準(企業会計基準第34号)は2027年4月1日以後開始する事業年度から適用。借手はすべてのリースで使用権資産とリース負債を計上 試験の時点では強制適用前。旧基準のファイナンス・リース/オペレーティング・リースの区分も問われうる
開示制度 四半期報告書は廃止(2024年4月1日以後開始する四半期から)。上場会社は半期報告書を提出 2017・2018年度の四半期報告書・提出期限の出題
企業結合 取得はパーチェス法のみ 持分プーリング法の選択肢
退職給付 連結貸借対照表では、未認識の数理計算上の差異・過去勤務費用をその他の包括利益を通じて純資産に計上 2012年改正前の遅延認識を前提とした問題
減価償却 2012年4月1日以後に取得した資産の定率法は200%定率法(保証率・改定償却率) 250%定率法の問題
繰延資産 株式交付費・社債発行費等・創立費・開業費・開発費の5項目 旧商法の試験研究費・建設利息など

経済と投資理論の内容は、改正による変化はほとんどありません。古い問題も、数値を変えた練習問題としてそのまま使えます。ただし2021年度までの形式は大問1つの配点が大きく、1つの設定で10点前後を問うことがあります。今の形式では同じ題材が5〜8点の大問になるので、時間配分の練習には2022年度以降の問題を使ってください。

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